
祖母の家ごと北へ曳かれている最中に強面の曳家の頭から『家は俺が支えとる』と言われ傾いたままの座敷で全体重に沈められ三晩かけて孕むほど中に出された話
| タイトル | 祖母の家ごと北へ曳かれている最中に強面の曳家の頭から『家は俺が支えとる』と言われ傾いたままの座敷で全体重に沈められ三晩かけて孕むほど中に出された話 |
|---|---|
| サークル | ヤリモクベイビー |
| ジャンル |
茶を注いでいる途中で、湯呑みの水面が縁の片側へ寄った。家が動いている。祖母が住んだ家ごと、私は一日に数十センチずつ北へ運ばれている。轆轤の綱が鳴って畳が傾いた夕方、片腕に受け止められた。「家は俺が支えとる。あんたは掴まっとけ」
綱島ふゆ(28)は、祖母が遺した木造の家を壊さずに残すと決め、道路の拡幅にかかる分だけ家を北へ移す曳家を頼んだ。曳家の頭・杉森万作(41)は187cmの大男で、屋号でしか呼ばれず、初めて来た日に床下へ潜ったきり半日出てこなかった。近所は、あの人は家より人を先に潰す、と笑い話にしている。曳きはじめてからも、ふゆは家に住み続けた。家は一日に数十センチずつ動き、茶を注げば水面が片側へ寄り、襖は途中で止まる。万作は座敷に上がるとき必ず靴を脱ぎ、仏壇の前だけは水平が崩れないように受けを足し直した。ふゆはそれを目の前で見ていながら、ずっと、仕事だからだと思っていた。三日目の夕方、轆轤の綱が鳴って家が大きく傾き、倒れかけたふゆを万作が片腕で受ける。『家は俺が支えとる』。あんたは掴まっとけ、と続いた声は、思っていたよりずっと低くて静かだった。頭ではなく名前で呼びたいと言うと、万作は答える代わりに柱の墨の脇へ自分の名の一字を鑿で刻む。万作さん、とふゆがその字を読んで呼ぶと、彼は一度だけ頷いた。傾いたままの座敷で、彼は自分の重さを最後まで腕で殺していた。いいかと訊いては止まり、ふゆが両手でその腕を引き落とすまで沈んでこない。家が据わるまでの三晩、綱の鳴る音のあいだじゅう、孕むほど何度も中に出された。据え終えた朝、ふゆは湯呑みに茶を注ぎ、水面が縁と平らになるのを二人で見た。









祖母の家ごと北へ曳かれている最中に強面の曳家の頭から『家は俺が支えとる』と言われ傾いたままの座敷で全体重に沈められ三晩かけて孕むほど中に出された話

